インターミッション
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■ 専門家待望論
江戸
?? このたび河合先生のご著書を幾つか拝読しました。なかでも一番面白かったのは『人の心はどこまでわかるか』。ご専門の領域で、長年のご経験に基づいた深い洞察に感服しました。
河合
?? いかに「人の心」は判らないか、ということですね。
江戸
?? ご専門の領域において、後輩に対して、質問にお答えになられている。人間に対する眼差しが暖かく、仏心に包まれるといった感です。外国人だと患者さんは、個対個のいわゆる対象物という感じになるのではないでしょうか。
河合
?? 我々は後輩に対して、何か「芸事」をやれと言います。専門の勉強だけではなく。
江戸
?? 心の問題が扱われているのですが、最後の章で、心療療法を重ねてゆく上で、「初心だからこそ出来ること」とか、「経験を重ねることの重要性」、「資質があっても努力を重ねないと」、「治してやるというのはダメ」、「良い指導者を得ないといけない」など言及されていらっしゃいますが、これはまさに音楽の分野においても同じことが言えますね。
河合
?? ものすごくパラレルですね。
江戸
?? ご本の中で、「専門家待望論」を語っておられます。日本ではあらゆる場合に専門家が重要視されず、どの領域でもアマチュアが大手を振っている現状がありますが、どこに原因があるのでしょうか。
河合
?? 日本のお稽古事が「易業」(イギョウ)、たやすいこと、どんな人でも努力すれば出来るという考え方がどこかにあります。それと日本人の平等感。個性を認めず、皆平等だという考えが。
江戸
?? 芸術家は個性を主張しなければ成り立ちません。会社などでも図抜けたアイディアがある人がなかなか主張できず、孤立して力が発揮出来ないとか。
河合
?? 日本ではクリエイティヴィティがある人は生きてゆけないと少し冗談交じりに言っていますが、変わってほしいものです。
江戸
?? 本当ですね。これから変わって行かざるを得ないのではないでしょうか。
■ 不況克服には文化にもっとお金を使うべき!
江戸
?? 文化庁長官に就任(平成14年1月)されてから、文化行政についてのお考え、この1年のご経験でのご感想などお伺いしたいと思います。
河合
?? 就任当時も今も強調していますことは、不況はデプレッション、抑圧症もデプレッションです。これは薬で治ることがあるのですが、薬が効かない人でもカウンセリングしているうちに何かクリエイティヴなことに取りかかり始める、それも思ってもいなかったことに。例えば急に絵を描き出すとか。それと同時に、仕事の方も順調になってゆき、心身も治ってゆくのです。今、日本経済は不況に陥っています。様々な経済政策が投入されていますが、それが効かなくなっている。不況を克服するためには、文化的なクリエイティヴな方向にもっとお金とエネルギーを使うべきだと思います。日本はもっと文化や芸術にお金を投入することで、実際は日本の経済状況は変わってゆくのではないか。文化とか芸術によって日本中をもっと元気に楽しくしようと考えて、文化庁長官に就任しました。
江戸
?? 文化と経済は両輪ですね。
河合
?? 両輪とは思わない人はまだまだ多いです。
江戸
?? ばりばり働いている人たちが余裕がなく、そう思わないこのが残念です。
河合
?? 特に40代、50代の働き盛りの男性に自殺が多いです。また一番、文化芸術に縁がないのがこの年代です。
江戸
?? インドネシアのバリで、<東京の夏>音楽祭のリサーチのために、舞踊や音楽について知りたいと現地人に話したところ、「今まで、日本人がそのようなことに興味を持ってくれたことがなかった。ゴルフや仕事の話ばかりで」と言われたんです。
河合
?? 日本ではゴルフは仕事なのです。日本はなかなか遊びが出来ない国。私の年代なぞは「楽しみは罪悪」という感覚がぬぐいきれない。それに反発して頑張ってきましたが、こうした感覚は刷り込まれるものですね。
江戸
?? 私も遊ばず、勉強せよ、努力せよと育てられた世代です。
* 河合隼雄氏には、第19回豕?硫?gt;音楽祭にて、价?gt;イアル・ワトソン/河合隼雄「儀式・自然・音楽」 にご出演いただきます。詳細はこちら。
*後編 (続く >>)
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